0 はじめに~過去問神話を解体する!
1 過去問の適切な取り組み方
2 真の神教材はこれだ!
0 はじめに~過去問神話を解体する!
いきなりですが、問題です。
志望校への合格可能性を上げるためには、過去問をやり込む必要がある。
これは◯でしょうか?
それとも、✕でしょうか?
正答率は低いと思います。
なぜなら、答えは△だからです(△があるなんて聞いてないよ~)。
もちろん過去問を解くことは必要です。
受験生全員が受ける模試の問題と特定の学力層だけが受験する入試問題とはまったく違うものだからです。
また、出題範囲の存在するカリキュラムテストと出題範囲の存在しない入試問題が異なるものであることも言うまでもないからです。
しかし、過去問をやり込めば、合格可能性が上がるというわけではありません。
なぜでしょう?
理由は簡単です。
第一志望校の過去問は受験生全員がやり込んでいるからです。
第一志望校の過去問をやり込んでいない受験生がいたら、教えてほしいくらいです。
よって、第一志望校の過去問を少々やり込んだくらいでは、ライバルに差をつけることができないのです。
そもそも、過去問をやり込んだら、合格可能性が上がるというエビデンス自体が存在しないはずです。
そのエビデンスを示すためには、同じ成績の生徒の合否と過去問を解いた回数を相当数調べ、両者を比較すべきです。
しかし、そのような実験は実際には不可能でしょう。
ただ、根拠を示すのは別の機会にしますが、実際に実験を行っても、過去問を解いた回数の多少の差が有意な結果を生むとはとても思えません。
逆に、合格可能性は過去問を解いた回数ではなく、基礎学力でほぼ決まっているということを示すデータは存在します。
何でしょうか?
模試です。
模試は、1万人以上のデータをもとに、基礎学力と合格可能性がほぼ対応していることを示しています。
You Tubeでも過去問やり込め派の動画が多いのですが、そのようなエビデンスのない非科学的なことを言う人のことは信用すべきではないでしょう。
1 過去問の適切な取り組み方
さて、以上のことをふまえた上で、過去問の適切な取り組み方について説明させて下さい。
今述べた理由から、過去問を入試直前にやり込むのはおすすめしません。
しかし、過去問を解くことは必要です。
繰り返しになりますが、受験生全員が受ける模試の問題と特定の学力層だけが受験する入試問題とはまったく違うものだからです。
だとすれば、過去問は、模試とともに、また模試を補うものとして、受験勉強の計画を立てるためのペースメーカーとして使用すべきでしょう。
よって、まだ合格最低点にはほど遠い点数しかとれなくても、夏もしくは秋口から定期的に取り組んで下さい。
ここで保護者の出番です。
過去問を解くスケジュールを組んで下さい。
正確なスケジュールでなくてもかまいません。
月1回や月2回など、大ざっぱなスケジュールでもかまいません。
月1回解くとすれば、数年分必要です。
もし可能であれば、念のため、メルカリやアマゾンなどで10年分ほどそろえて下さい。
ただし、10年分をそろえるのは志望順位の高い1~2校だけにしましょう。
過去問に取り組むには時間がかかります。
解くだけで3時間ほどかかり、解き直しもするとしたら、1日仕事だと考えて下さい。
よって、受験する学校すべての過去問をやり込むのは時間の無駄です。
お試し受験の1月校の過去問は、四谷大塚のHPなどで、どういう問題が出るのかを確認するだけでもかまいません。
おさえ校も、1回解いて、合格ラインを越えていれば、それで十分でしょう。
学校の説明会に参加すれば、昨年度の過去問が手に入ることが多いです。
そして、第一志望校の過去問で取れた点数をもとに、受験勉強のスケジュールを組むのです。
どの教科もしくはどの分野をあと何点伸ばせばよいのか。
どの教科もしくはどの分野ならあと何点伸ばせそうか。
第一志望校の過去問で取れた点数をもとに、こうしたことをトータルに判断できるのは保護者しかいません。
1教科しか教えていない大手塾の講師には無理です。
しかも、大手塾のカリキュラムはレディメイドです。
わが子の受験勉強のスケジュールをオーダーメイドできるのは保護者しかいません。
なお、受験勉強のスケジュールを組む際には、模試も積極的に参考にしましょう。
各問題の正答率などの詳しい資料を参照できます。
2 真の神教材はこれだ!
さて、ここで復習を簡単にしておきましょう。
最上位の数校を除けば、塾のテキストで何度も解いた標準的な難易度の問題を確実に解くことができれば、合格できます。
受験生の大半にとって、合否を分ける問題は難しいものではなく、時間があれば、解けるはずの問題です。
しかし、テストでは、解けるはずの問題で失点してしまうのです。
では、どうすればよいのでしょうか?
ずばり結論から述べます。
6年生になってから、標準的な難易度の典型題を集めた、いわゆる「追い込み教材」に取り組むのが有効です。
「追い込み教材」というのは、例えば、四谷大塚の「四科のまとめ」、日能研の「ベストチェック」・「メモリーチェック」、サピックスの「コアプラス」、栄光ゼミナールの「コンプリーション」、東京出版の「プラスワン問題集」・「ステップアップ演習」などのことです。
大手塾の入試報告会に潜入すると、入試問題を的中させたことを得意満面に語っていますが、騙されてはいけません。
かつて御三家特訓の教材を作成していた経験からすれば、「え、たったそれだけしか当たっていないの?」という感じです。
大手塾の御三家特訓の教材の的中率の低さと比較すると、「追い込み教材」の的中率は驚異的です。
「追い込み教材」の的中率を入試問題を使って具体的に示すのは容易いのですが、紙幅の制約上、別の機会にさせて下さい。
ここではエピソードを1つだけ紹介させていただきます。
10年ほど前の入試直前に、ある女子生徒に算数の四科のまとめに集中的に取り組ませたことがありました。
第一志望校に無事受かった、その女子生徒は入試を終えて次のように言いました。
「あみちゃんは神だ。あみちゃんが直前に教えてくれた問題しか入試に出なかった。」
教師の権威を保つために、「だろ?」と言っておきましたが、本当の神は四科のまとめです。
特に算数の追い込み教材、四科のまとめ、ベストチェック、プラスワン問題集、ステップアップ演習は驚異的な的中率を誇る神的問題集だと言ってよいでしょう。
特にボーダー付近の数問程度を積み増すのには無類の威力を発揮します。
「追い込み教材」の使用上の注意をさせて下さい。
「追い込み教材」は、6年生になったら、すぐに始めて、1年で2~3周はして下さい。
集中して暗記するというよりは、何度も繰り返して体に染み込ませるというイメージで取り組んで下さい。
よって、時間的な余裕がなければ別ですが、原則、解けた問題も含めて、すべての問題を繰り返し解いて下さい。
その方が解けた問題に対する理解も深まります。
なお、各問題には、解けたか解けなかったかを示す印を必ず毎回つけて下さい。
テキストの問題番号の脇に取り組んだ日付と◯✕を書き込めばよいでしょう。
そうすれば、解けなかった問題が一目瞭然です。
また、「追い込み教材」は、できれば、2種類用意しましょう。
一方が他方の類題演習になるからです。
ただ、余裕がなければ、1種類でもかまいません。