0 はじめに
1 算数
2 理科・社会
3 受験チャート
はじめに
保護者の中には、こんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃると思います。
第一志望校に受かるためには偏差値が10足りない!
あと1年でどうしよう!?
たしかに偏差値を10上げるのはなかなか大変です。
しかし、私どものところには最後の1年間で偏差値を10以上上げる生徒が毎年必ずいます。
さすがに全員はありえませんが、3人に1人ほどの割合でしょうか。
中には1年で偏差値を15ほど上げる生徒もいます。
10人に1人くらいですが。
なお、偏差値を30上げましたといった塾の宣伝をたまに見かけますが、あれにはカラクリがあります。
例えば、偏差値を30上げて、偏差値が55の学校に受かったとすれば、最初の偏差値は25ですが、偏差値25は偏差値の事実上の最低値です。
偏差値25というのは、何らかの理由で白紙答案を提出したという以外に、想定できないのです。
普通に考えますと、偏差値は4年生から6年生までの3年間で20くらいまでしか上がりません。
これから述べる方法で全員が1年間で偏差値を10以上上げることができるとまでは言いませんが、3人に1人はできますから、試してみる価値は十分にあります。
1 算数
さて、いきなり結論からいきましょう。
キーは算数です。
理由は、第1に、算数がもっとも点差がつきやすい教科だからです。
一例として、合格者平均点と受験者平均点の各教科の差を見てみましょう。
一般に、算数が10~20点、国語が10点以内、理科・社会が各5点以内となっています。
では、なぜ算数の点差がつきやすいかと言いますと、他教科に比べ、配点が高いことがあげられます。
ほとんどの中学校で、算数・国語の満点が各100点、理科・社会の満点が各50~75点となっています。
また、算数は、他教科に比べ、問題数が少なく、1問の配点が高いこともあげられます。
各問題の配点を公表していない学校が多いのですが、算数が1問5点、国語が、記述問題を除いて、1問2~3点といったところでしょう。
キーが算数である第2の理由は、算数がもっとも成績を伸ばしやすい教科だということにあります。
例えば、偏差値60以上の上位15%に入るためには、上位15%しか解けない難問を解けなくてはならないというわけではありません。
もっとも代表的な志望校判定テストである四谷大塚の合不合判定テストの資料によれば、次のようになります。
全体の正答率が50%以上の問題をすべて解けば、偏差値は55、上位30%です。
全体の正答率が25%以上の問題をすべて解けば、偏差値は60、上位15%です。
テストは時間が限られていますが、時間をもう少し与えれば、正答率が50%の問題は正答率が80%に、正答率が25%の問題は50%に上がります。
正答率が50~80%の問題というのは、塾の教科書の5年生の例題レベルにあたる標準問題です。
つまり、全体の2人に1人が解ける標準問題を解ける生徒は、訓練次第で、最上位数校を除く学校の合格ラインに達する可能性があるということになります。
詳細は省きますが、他教科には、これほど顕著な、正答率と偏差値の関係が見られません。
では、標準問題の正答率を高め、成績を上げるためには、どうすればよいでしょうか?
標準問題を確実に解き切るための最強の武器が、典型題を網羅した「ベストチェック」、「四科のまとめ」、「プラスワン問題集」、「ステップアップ演習」といった問題集です。
これらの教材をマスターし、標準問題を確実に解くことができるようになることが、偏差値を1年間で10以上上げるための、必須条件です。
また、算数の場合、1問の配点が高い分、ミスが致命傷になりますので、ミス対策も徹底して行う必要があるでしょう。
3 理科・社会
とはいえ、もちろん算数だけで合否が決まるわけではありません。
国語も合否に大きく関わってきます。
ただ、国語に関しては、回を改めます。
では、理科・社会はどうすればよいのでしょうか?
いずれにしましても、理科・社会は6年生になってからが勝負の科目です。
得意科目でない限り、5年生までに習ったことは忘れます。
20年くらい前の話ですが、男子最難関の筑駒に受かった生徒が6年生の夏期講習直前に「仙台県」と答えていたくらいです。
もちろん答えは「宮城県」です。
6年生の夏期講習直前に「仙台県」と答えていても、男子最難関の筑駒に受かるのですから、理科・社会はそれぐらい仕上げが遅くてもかまわないのです。
まずは、6年生になったら、「コアプラス」、「四科のまとめ」、「メモリーチェック」、「コンプリーション」などを使って、基礎固めを始めましょう。
これらの教材は一度で覚え込むのではなく、一回一回は完璧でなくてもよいので、何度かくり返して下さい。
例えば、夏にパーフェクトに覚えても、入試期には忘れてしまうからです。
そして、これらの教材をくり返すのと並行して、模試、過去問、塾の演習用問題集などでより実戦的な演習を行って下さい。
例えば、同じ「東大寺の大仏」が答えであっても、写真を見せられて「これは何ですか?」と問われる場合もあれば、「聖武天皇が社会不安をしずめるために作ったものは何ですか?」と問われる場合もあります。
つまり、同じ答えであっても、問われ方がいろいろありうるのです。
そうしたいろいろな問われ方に慣れるために、実戦的な問題演習が必要なのです。
また、暗記はアウトプット中心で行うのがよいというのが今や定説です。
つまり、暗記事項とにらめっこするのではなく、問題を解くという形で暗記を行いましょう。
さて、ほとんどの生徒は、以上のことを行えば、理科・社会は何とかなります。
ただ、理科・社会は点差がつきにくく、合否にあまり関係のない教科ですが、あまりに不得意だと、理科・社会で落ちることがあります。
理科・社会がかなり不得意な場合は、まずは学習マンガを利用して、基本知識を詰め込むための箱を頭の中に作りましょう。
この箱がないと、いくら知識を詰め込んでも、頭の中に知識が残らないからです。
学習マンガをバカにしてはいけません。
私の教え子で、男子御三家に受かった、ある生徒は、「僕の理科の知識はほとんど学習マンガだ」と言っていました。
学習マンガだけで御三家に受かると言いたいわけではありませんが、学習マンガが役に立つことの傍証とはなるでしょう。
学習マンガはどれでもかまいませんので、中学受験の参考書コーナーで好きなものを選んで下さい。
3 受験チャート
教科別の学習法は以上となります。
さて、偏差値が10以上上がるには1年かかります。
なぜなら、最後の、しかも最重要のピースは受験チャートだからです。
受験チャートとは、2/1にどの学校を受け、その合否で2/2の受験校を枝分かれさせ…といったものです。
受験チャートの組み方次第で受験結果は天と地ほどの差がつきます。
塾講師の大半はビックリするくらい受験チャートの組み方が下手なので、不安な方は、受験チャートの組み方のうまい講師に頼るしかないと思います。
ただし、かりに受験チャートの組み方がうまくても、1教科しか担当していない講師は、生徒の生の学力をトータルに把握できておらず、その子にピッタリの受験チャートを組むことができないので、ご注意下さい。