中学受験で3人に2人が第一志望校に受かる塾が分析する【中学受験ブームは続くのか?】2024年首都圏中学入試


0 はじめに

1 受験者数の推移

2 小学生数の増減

3 景気

4 大学受験の難易度

5 公立不信

6 まとめ

7 今年のトピック

動画はこちらからどうぞ

0 はじめに

今回は2024年首都圏中学入試を分析します。

他塾のものと重なる部分もありますが、中学受験の歴史を踏まえ、中学受験の本質が理解できるようにしている点が異なります。

来年以降の入試状況も展望しますので、どうか最後までお読み下さい。

1 受験者数の推移

さて、2024年2月1日午前に首都圏(1都3県)の私立中学校を受験したのは約43,000人でした

近年のボトムであった2015年の約36,000人から7,000人以上増えています

しかし、近年のピークであった昨年よりはわずかに減っています

一般的に、受験者数の増減の原因は、1 小学生数の増減、2 景気、3 大学受験の難易度、4 公立不信にあると考えられます。

以下でそれぞれについて検討していきます。

2 小学生数の増減

小学生数の増減から見ていきましょう。

全国的な少子化の傾向に反し、首都圏の小学生数は微減にとどまり、受験率の高い東京都の小学生数は増加傾向にあります

小学生数が大きく減っていないところに、以下で見るように受験率が増加しているので、受験者数が増加しています。

小学生数の増減は数年は同様の傾向が続く模様です。

3 景気

次に、景気です。

たしかに、バブル崩壊後の1990年代後半とリーマンショック後の2010年代前半は受験率が下降気味でした

しかし、逆に言いますと、バブル崩壊やリーマンショックほどのことがない限り、景気が受験者数に大きな影響を与えることはないようです。

当面は無視してよい要因だと思われます。

4 大学受験の難易度

続いて、大学受験の難易度を見てみましょう。

中学受験者数の増えた1986年から1992年は、大学受験関係者にとっては「ゴールデンセブン」と呼ばれる時代でした

第二次ベービーブーマーが大学受験期を迎えたのです

定員の倍ほどの数の受験生が殺到して、受験生の半数あまりしか大学に入ることができないというほど、大学受験が難化した時代でした

今回の中学受験者数の増加の当初の原因も、大学入学共通テストの負担増と私立大学の入学定員の厳格化にあったと考えられます。

国公立大学の受験生に必須の大学入学共通テストは、従来のセンター試験と比べ、与えられる文章や資料などの量が増え、読解力や情報処理能力が以前より求められるようになりました。

また、私立大学の入学定員の厳格化は、地方創生の観点から大都市圏の大学に入学者が集中するのを防ぐために実施されました。

これらの理由から、いわゆる早慶マーチなどの私立大学がかつてないほど難化したのです

実際、中学受験者数の増加を牽引したのは当初は付属校人気でした

大学付属校に入学すれば、大学入学共通テストや私立大学の一般入試を避けることができるというわけです。

なお、私立大学の入学定員の厳格化は緩和の方向に向かっていますが、緩和の効果は一時的で、大学入学共通テストの負担は増す方向にあります

私立大学の定員は単年度ではなく、全学年の総学生数で判断されるようになりました。

これで私立大学は単年度では多めに合格者を出せるようになったのです。

しかし、私立大学が実際に多めに合格者を出している結果、緩和の恩恵を受けることができるのはここ2年ほどの受験生のみになる模様です。

また、大学入学共通テストには新たに「情報」科目が追加されることになっています。

難化した早慶マーチが大きく易化することはないでしょう

よって、付属校人気も高止まりするでしょう

5 公立不信

最後に、公立不信です。

私立校が台頭したそもそもの原因は、自治体が導入した学校群制度でした。

1960年代までは番町小→麹町中→日比谷高校→東大というエリートコースがありました

しかし、当時は第一次ベビーブーマーが受験期を迎えていました

「受験戦争」と呼ばれるほど、高い偏差値の学校を目指した競争が激しさを増していました

そのため、「受験戦争」の元凶とされた日比谷をつぶすため学校群制度が導入されました

それ以降、日比谷高校を受験したくても、受験することができなくなりました。

受験生は、日比谷高校、三田高校、九段高校からなる学校群しか受験できず、合格すれば、3校のいずれかに自動的に割り振られたのです。

このため都立高校の人気と大学合格実績は長期にわたって低迷してしまいました。

その代わり、数十年にわたる中学受験ブームがやって来ます

その根底には、学校群制度に加え、1980年代に社会問題となった校内暴力やゼロ年代に塾がしきりに煽った「ゆとり教育」への不安などの公立不信があると考えられます。

今回も、コロナ禍での公立中学校のオンライン対応の遅れが連日のように報道されたことが、私立中学校の受験者数の増加の原因だと思われます。

コロナ禍での受験者数の増加はおさまったようですが、公立不信が根底にある以上、中学受験ブームは簡単には終わらないでしょう

6 まとめ

まとめましょう。

首都圏の小学生数が大きく減っていないところに、私立大学の難化と公立不信が原因となって受験率が増加しているので、受験者数が増加しています

私立中学校の受験は、受験者数の回復に伴い、全体的な競争の激化が見られます

一足先に人気が回復していた大学付属校は人気が高止まりしそうです

今年は男子御三家・桜蔭がそろって応募者数を減らしました。

その一方で、付属校や共学校と比べ、比較的受験が楽だった中堅進学校の男子校・女子校の入試が厳しいものとなっています

今後もしばらくは厳しい受験が続きそうです

一部では「付属校離れ」や「ピークは過ぎた」といった意見も見られますが、楽観的な見通しは慎むべきでしょう。

7 今年のトピック

最後に今年の主なトピックをざっと見ておきましょう。

1 開智所沢が新設されました。

2 淑徳与野が医進コースの特別入試を新設しました。

3 横浜雙葉が第2回入試を新設しました。

4 三輪田が法政大学への推薦枠を設けることを発表しました。

5 順天が北里大学と法人合併することを発表しました。


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